こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。
ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box。
Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。
今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座【5-2】メジャービートとマイナービート/Major vs. minor beatsの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、5章は「映画技法/Film grammar」。
【5-2】メジャービートとマイナービート/Major vs. minor beatsでは、映像技法の話に入る前に「ストーリー構成」の復習を行います。専門用語も出てきますが、シーンの役割を理解して、より魅力的な映像を撮りましょう。
後半のレッスンもチャレンジしてみてください!
※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。
メジャービートとマイナービートとは?
メジャービートとは、ストーリーの8ステップで分けたうちの一つの「ビート」を指します。、
ビートにやストーリーの8ステップに関しては、下記ページにて詳しく解説しています。
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マイナービートとは、メジャービートで区切られたシーンを、さらに細かい感情の変化で表した「ビート」になります。
小さいコマ順に用語の解説をします。
ショット
ショットとは、映像の中でも1番小さいカットになります。(後ほど画像で解説します)
ショットを合わせると「マイナービート」になります。
マイナービート
マイナービートとは、一つのシーンの中で感情が変わるそれぞれの「ビート」を指します。(後ほど画像で解説します)
マイナービートを合わせると「シーン」になります。
シーン
シーンとは、ストーリーの特定の時間と場所を指します。シーンでは、キャラクターが新しいことを学んだり、キャラクターたちが何かを一緒に体験したり、感情を共有したりします。(後ほど画像で解説します)
しかし、シーンにたくさんの情報を詰めると観客は疲れてしまうため、注意が必要です。
そのためシーンの目的は、「キャラクターが何かを学んで次の行動へ移すこと」と考えることが大切です。
シーンをまとめて大きな変化を起こしたものが「メジャービート」となります。
メジャービート(シークエンス)
メジャービートとは、ストーリーの中で特別な変化や伝えるストーリーの目的が大きく変化したときの括りです。
またメジャービートで分けられたシーンを一括りにしたのが「シークエンス」と言います。シークエンスはシーンと違って、1カ所の場所で括られるとは限らず、複数の場所でも括る場合があります。
大切なのは、キャラクターの大きな変化であり、また、ストーリーの8ステップの「1ステップ」でもあります。
ストーリーの8ステップ
ストーリーの8ステップとは、ストーリーの大まかなの構成を作るのに役立つ、8つのステップです。
以下が、ストーリーの8ステップです。
- 昔々、あるところに〜〜〜
- 毎日、〜〜〜
- しかしある日、〜〜〜
- このせいで、〜〜〜
- そのため、〜〜〜
- そのせいで、〜〜〜
- ついに、〜〜〜
- それ以来、〜〜〜
この物語の教訓は、〜〜〜です。
ストーリーの8ステップは別名「ストーリースパイン」と呼ばれ、下記ページで詳しく解説しています。
こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。 ストーリースパイン(Story Spine)が物語作りに役立つって本当かな? 物語の構成ができたけど、ぐちゃぐちゃしていないか不安。 ストー[…]
幕
基本的に映画は、「日常 → 事件 → 教訓」の「3幕構成」で作られます。
下記ページにてそれぞれの「幕」の役割について解説しています。
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ストーリー
ストーリーとは一つの物語です。「ショット」〜「幕」まで細かい要素から大きな要素まで一つでまとめられた作品がストーリーになります。
ピクサー『カーズ/クロスロード』のビート
2017年公開、カーズシリーズ第3作目の『カーズ/クロスロード』。
今回はこの作品のキャプチャー画像を用いて「メジャービート」、「マイナービート」、「ショット」の解説します。
『カーズ/クロスロード』のメジャービート
『カーズ/クロスロード』のメジャービートの一つは、マックィーンがトーマスビル・スピードウェイを訪れるシーンです。
このメジャービートには3つのシーンがあるので、キャプチャー画像で紹介します。
①スモーキーがマックィーンを特訓するシーン。
②マックィーンがベテランたちとレースをするシーン。
③マックィーンがクルーズ・ラミレスに負けるシーンです。
マックィーンが「トーマスビル・スピードウェイを訪れるシーン」という一つのシークエンスでありますが、それぞれの行動や感情の変化があります。
これがメジャービートです。
『カーズ/クロスロード』のマイナービート
メジャービートの②で紹介した「ベテランたちとレースするシーン」では3つのマイナービートがあります。
1. 森の中を注意して走り始めるマックィーン。
2. ベテランたちに追いつけないとわかると、レースを楽しむマックィーン。
3. 楽しんで走った結果、ベテランたちを追い抜くマックィーン。
マックィーンがジャクソン・ストームに勝つために「特訓するシーン」という一つの括りですが、その中でも不安や緊張や楽しむ感情が現れています。
これがマイナービートです。
『カーズ/クロスロード』のショット
マイナービートの3で紹介した「ベテランたちを追い抜くビート」では、3つのショットがあります。
⑴正面のショット。
⑵背後のショット。
⑶そして下からのショット。
マックィーンがベテランたちとレースをして、結果的にレースを楽しんだことで「ベテランたちを追い抜いたビート」ですが、アングルを変えることで、臨場感がより伝わります。
これがショットです。
【レッスン】シーンとシーケンスを考えてみよう
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座のレッスンです。
今回のレッスンはシーンとシーケンスについて考えます。「3つの物語」と「8ステップ」を使いますので、下記ページをご覧ください。
- 「3つの物語」:【1-3】あなたの好きな物語/Your favorite stories
- 「8ステップ」:【3-2】ストーリーの8ステップ/Story spine
今回は2つのステップです。それでは、いきましょう!
1. 好きな物語のメジャービートとマイナービート
あなたの好きな3つの物語から1つの作品を選び、メジャービートを1つ選択してください。
- 選んだメジャービートはどのようなビートですか?
- 選んだメジャービートはどのようなマイナービートを含んでいるか、書き出してみましょう
(マイナービートは一つの出来事や発見です。)
2. あなたの物語のメジャービートとマイナービート
あなたの物語を「8ステップ」から、2つのメジャービートを選択してください。
それぞれに必要なマイナービートを書き出してみましょう。
今回のレッスンは以上です。
メジャービートとマイナービートが書き出せた人は、コメント欄やTwitterに投稿してみてくださいね。
<#タグはこちら>
#ピクサーレッスン
#メジャービート
#マイナービート
【5-2】メジャービートとマイナービート/Major vs. minor beatsのまとめ
メジャービートとマイナービートはキャラクターの感情や、ストーリーの目的を変化させるための大切なパートです。
一つのパートにたくさんの情報を詰めすぎないように、あなたが伝えたいストーリーを完成させましょう。
【5-2】メジャービートとマイナービート/Major vs. minor beatsは以上です。
【5-3】ショットの基本形/Basic shot typesへお進みください。
こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box。Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供す[…]
※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
こんにちは!ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。ピクサーは世界が認めるストーリーテリングの伝道師。ピクサーの全21作品(1995年〜2019年)は、アニメ映画賞の最高峰と言われるアカデミー賞「長編[…]
【5-2】メジャービートとマイナービート/Major vs. minor beatsの動画
【5-2】メジャービートとマイナービート/Major vs. minor beatsの日本語翻訳
【登場人物】
ナレーター(Louis Gonzales:Story Artist)
リー(Lee Unkrich:Director)
アンドリュー(Andrew Jimenez:Digital Storyboard Artist,Director)
キャサリン(Katherine Ringgold:Editor)
ブライアン(Brian Kalin O’Connell:Story Artist)
ナレーター:
こんにちは。映画技法のレッスンを担当する、ピクサーのストーリーアーティストのルイ・ゴンザレスです。僕の仲間を紹介しましょう。
リー:
ピクサー・アニメーション・スタジオで監督をしている、リー・アンクリッチです。
アンドリュー:
2000年からピクサーにいる、アンドリュー・ヒメネスです。デジタル絵コンテとグラフィックのアーティスト、そして監督だよ。
キャサリン:
ピクサーの映画編集者のキャサリン・リンゴールドよ。
ブライアン:
ピクサー・アニメーション・スタジオのストーリーテラーの、ブライアン・ケーリン・オコネルだよ。
ナレーター:
前回の動画のような面白くてメリハリのあるストーリーは、「映画技法」である画面構成、演出、カメラワーク、編集を使って作ります。
映画技法を使う前に、伝えたいストーリーを詳しく決める必要があります。ここで、3章で学んだ「ストーリー構成」の復習をしましょう。
3章では、「8ステップ」を使ってストーリーを区切りました。8ステップは、ストーリーの重要な瞬間である「ビート」をつなげたものです。
わかりやすいように、8ステップのビートを「メジャービート」と呼びます。
もっと詳しくストーリーを理解するために、メジャービートを1つか2つ以上のシーンに分け、分けられたシーンのまとまりが「シークエンス」になります。
シーンではストーリーの特定の時間と場所で、キャラクターが新しいことを学び前進します。
例えば、『カーズ/クロスロード』のメジャービートは、マックィーンがトーマスビル・スピードウェイを訪れるシーンです。
このメジャービートには3つのシーンがあり、スモーキーがマックィーンを特訓するシーン、マックィーンがベテランたちとレースをするシーン、そしてマックィーンがクルーズ・ラミレスに負けるシーンです。
それでは、ピクサーのアーティストにシーンとシークエンスの考え方を聞いてみましょう。
-「 シーン」と「シークエンス」はどのように分けますか? –
キャサリン:
『カーズ/クロスロード』のマックィーンの特訓のシークエンスはたくさんのショットが素早く入れ替わります。
特訓の場所を変えながらマックィーンはどんどん腕を上げて強さを増し、レースを目指すの。
リー:
シークエンスは一カ所だけで起きるとは限りません。場合によってストーリーでの特別な変化や状況は、複数の場所でも描かれます。
ブライアン:
キャラクターたちが一緒に何かを体験する時は「ひと区切り」にします。また、キャラクターたちが同じ感情を共有している瞬間もひと区切りにします。
キャラクターの感情の変化をひと区切りにするのです。
アンドリュー:
ストーリーの要点をたくさん詰め込もうとすると、1シーンが長くなりすぎる。だから映画全体のバランスをしっかり考えることが大切さ。
色々なことを描こうとしすぎるとシーンが長くなるか、短い時間に情報を詰め込むことになり、観客が疲れてしまう。
そのためシーンの目標は「キャラクターが何かを学んで、次の行動に移る」ことを基準にするんだ。
ナレーター:
シーンを上手く区切れたら、それぞれを「マイナービート」というひと続きの小さな考えに区切ります。
例えば、マックィーンとベテランたちのレースのシーンには、3つのマイナービートがあります。
注意深く走り始めるマックィーンは、ベテランたちに追いつけないことがわかると、レースを楽しみます。その結果ベテランたちを追い抜きます。
映画作りでは、それぞれのマイナービートをさらに1つか2つ以上の「ショット」に区切ります。
キャラクラ―の動きを見せるのが「ショット」で、例えばここには3つのショットがあります。1つめ、2つめ、そして3つめ。
ショットには様々な表現方法があり、遠くから見せたり、近寄ったり。動きが少なかったり、激しかったり。
次に、すべてのショットを絵で説明した絵コンテを描きます。絵コンテは簡単に変更できるので、ストーリーをより面白くするために描き直し、順番を変え、必要ないものは捨ててしまいます。
レッスンの終了までに、あなたのストーリーのシークエンスを絵コンテにし、「映画技法」を使う練習をしてみましょう。
その前に、シーンやショットの区切り方を含め、伝えたいストーリーをじっくり考えてみましょう。この後のレッスンで、ぜひ取り組んでみて下さい。