ストーリースパイン(Story Spine)とは?物語構成の事例

こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。

  • ストーリースパイン(Story Spine)が物語作りに役立つって本当かな?
  • 物語の構成ができたけど、ぐちゃぐちゃしていないか不安。
  • ストーリーを作りたいけど、どのように考えれば良いかわからない。

このような方に向けて、ストーリースパインを解説します。

ストーリースパインは「共感する物語の原則」であり、あまり物語を考えたことがない方でも活用できる手法です。

ストーリースパインの8つのステップについて、自分の好きな物語と照らし合わせて頂ければ、より楽しめます。

また、事例は『トイ・ストーリー3』と『ファインディング・ニモ』を題材にしているので、作品を懐かしみながら読んでいただければ幸いです。

ストーリースパイン(Story Spine)とは?

ストーリースパインとは、大まかな物語の構成を作るのに役立つ、8つのステップです。

アメリカの劇作家『ケン・アダムス(Kenn Adams)』が広めたと言われ、今ではディズニー、ピクサー、ジョージ・ルーカスなどの物語(映画)の構成の基本として愛用されています。

ストーリースパインの素晴らしい点は、物語の一貫性を考えられるところです。

物語を作ろうとすると様々なアイデアが浮かび、様々なシーンを伝えたくなります。

しかし、物語をストーリースパインに当てはめることで、「この物語で何を伝えたいのか」が明確になり、余計なシーンを省くことができるのです。

ストーリースパイン(Story Spine)の8ステップ

ストーリーの8ステップ

ストーリースパインは、以下の8ステップで構成されています。

  1. 昔々、あるところに〜〜〜
  2. 毎日、〜〜〜
  3. しかしある日、〜〜〜
  4. このせいで、〜〜〜
  5. そのため、〜〜〜
  6. そのせいで、〜〜〜
  7. ついに、〜〜〜
  8. それ以来、〜〜〜

    この物語の教訓は、〜〜〜です。

それぞれのステップについて、必要な要素や伝えるべき点を詳しく解説します。

1.昔々、あるところに〜〜(主人公の紹介)

ステップ1は、主人公と主人公の環境(時間や空間)の紹介です。
その物語が「いつ」「どこで」「誰が」起こっているかを伝えます。

ステップ1で大切なのは、物語で必要な情報をすべて伝えることです。

あくまで物語において必要な情報を伝えるだけで、物語の全ての情報を伝えるわけではありません。

2.毎日、〜〜(バランスの取れた世界)

ステップ2は、主人公の毎日の生活です。

  • 主人公は、どのような生活をしているか?
  • 主人公は、どのような目標や憧れを持っているか?
  • 主人公は、どのような悩みや恐れを抱えているか?

物語の世界観を伝え、主人公のバランス取れた世界を伝えます。

バランスの取れた世界とは、順風満帆な人生ではありません。

あくまで、物語の事件が起こる前の「均衡が保たれた世界」を指します。

3.しかし、ある日〜〜(バランスが崩れる事件)

ステップ3は、主人公の人生の転機です。
物語の事件によって、主人公の価値観(バランス)がポジティブ(+)からネガティブ(−)に変わります。

主人公の心の変化、環境の変化、社会の変化などによって、「人生の欲求(主人公の目標や憧れ)」が遠のくことを伝えます。

4.このせいで、〜〜(満たされない欲求)

ステップ4は、主人公の欲求の目的です。
事件によって主人公のバランスは崩れますが、主人公はそれを取り戻したいと望み、その望みの目的に気付きます。

主人公はバランスを取り戻すために、悩みや恐れなど「障害」に立ち向かう姿や必要性を伝えます。

5.そのため、〜〜(第一の行動)

ステップ5は、主人公がバランスを取り戻すための行動です。
主人公はバランスを取り戻すために障害を乗り越えようとしますが、それに伴って危険な目に遭ったり、仲間や心の対立が生まれます。

ここで「人生の欲求」が達成する場合もありますが、大切なのは主人公の心は満たされていないことです。

6.そのせいで、〜〜(予想外の反応)

ステップ6は、主人公の行動による失敗です。
主人公は障害を乗り越えようとするも、障害が予想以上に大きいことに気付きます。

「人生の欲求」が簡単に達成しない事実がわかり、人生の欲求はさらに遠のいてしまいます。しかし、主人公は少しずつ「人生で大切なこと」に気付き始めます。

さらに、最後には何をやってもうまくいかない「最悪な状況」に置かれます。これは、主人公が「人生で大切なこと」に気付く成長の機会へとなります。

7.ついに、〜〜(最後の選択)

ステップ7は、主人公の最後の決断です。

第一の行動(ステップ6)や予想外の反応(ステップ7)を通して「人生で大切なこと」を学んだ主人公は、今までとは違った選択をすることで「最悪な状況」を乗り越えます。

8.それ以来、〜〜(世界の反応)

ステップ8は、主人公の人生の回復です。
主人公は一連の障害を乗り越えたことで人生で大切なこと、いわゆる「教訓」を得ます。

そして主人公のバランスは回復し、ハッピーエンドを迎えます。

大切なのは、ステップ1の状態より、主人公が少しでも成長した状態になっていることです。

ストーリースパイン(Story Spine)の事例:ピクサー

ここで、ストーリースパインの事例をピクサーの物語より紹介します。

ピクサーの物語を題材にする理由は2つあります。

1つは、ピクサーが「ストーリースパインを大切にしている」と公言しているからです。
ピクサーの物語はすべてストーリースパインで当てはめることができるため、8ステップを照らし合わせることで、ストーリースパインの理解が深まります。

2つめ理由は、ピクサーが優れたストーリーテラーの集団だからです。以下が、ピクサーの実績です。

  • アカデミー賞 長編アニメ作品賞
    13回ノミネート(内、9回受賞)
  • ゴールデングローブ賞 アニメ賞
    15回ノミネート(内、9回受賞)
  • 英国アカデミー賞 アニメ映画賞
    11回ノミネート(内、7回受賞)※1995~2019年までの20作品

アニメ賞の受賞回数は世界のトップであり、ディズニーや他のアニメ業界と比べても群を抜いています。

ピクサーは世界で評価されている物語の構成(ストーリースパイン)のため、とても参考になるのです。

【事例】トイ・ストーリー3

カウボーイ人形のキャラクターの様々な感情

2010年公開、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞の「最優秀アニメ賞」を受賞したトイ・ストーリー3』。

私もこの物語には、何度も泣かされました。

以下が、トイ・ストーリー3のストーリースパインです。

  1. 昔々、あるところに、主人公のウッディというおもちゃは、もうすぐ大学生になるアンディの家でおもちゃの友達と暮らしていました。
  2. 毎日、ウッディはアンディのそばにいることを願っていました。
  3. しかしある日、友達たちは捨てられることを恐れて、保育園へと逃げ出してしまいます。
  4. このせいで、ウッディは友達に勘違いだと理解してもらうため、アンディの家に連れて帰らなければなりません。
  5. そのため、ウッディは友達を家に連れて帰ろうとするも、友達と対立が起こったり、女の子のボニーに拾われたり、ゴミ処理場へ連れて行かれたり、様々な危険な目に出会います。
  6. そのせいで、ウッディはおもちゃとして遊んでもらう楽しさ、おもちゃとしての役目、友情の必要性に気付きます。そしてウッディと友達は無事にアンディの家に帰りますが、アンディと一緒に大学へ行くか、最後の決断を迫られます。
  7. ついに、ウッディはすべてのおもちゃをボニーに寄付させるという「第3の選択」に気付き、アンディに自分の運命も委ねます。
  8. それ以来、ウッディは大切な友達と一緒に暮らしながら、ボニーの家でおもちゃとして遊んでもらいました。

『トイ・ストーリー3』の教訓は、「手放すことを学ぶこと」です。

ウッディは物語を通して、おもちゃの役目は「おもちゃを必要としている人のそばにいること」だと気付きます。

そしてウッディは最後の決断で、自ら寄付の箱に入ることで、アンディとずっと一緒に居たいという自身の「人生の欲求」を満たさず、アンディにウッディの役目(おもちゃとしての役目)を委ねるのです。

【事例】ファインディング・ニモ

スキューバダイビングの水中のニモ(カクレクマノミ)の家族

2003年公開、第76回アカデミー賞「長編アニメ作品賞」を受賞したファインディング・ニモ』。

ファインディング・ニモのストーリースパインは以下になります。

  1. 昔々、あるところに、主人公のマーリンという魚が、たった1人の息子のニモをとても可愛がっていました。
  2. 毎日、マーリンは恐れる海からニモを守るため、安全なサンゴ礁で生活をしていました。
  3. しかしある日、ニモは学校へ通うことになりますが、広い海へ飛び出たことでダイバーに捕まってしまいます。
  4. このせいで、マーリンはニモを探すため、安全なサンゴ礁を離れなければなりません。
  5. そのため、マーリンは仲間のドリーと広い海を進みますが、サメに襲われたり、クラゲの道を通ったり、様々な危険と出会います。
  6. そのせいで、マーリンは恐怖と向き合ったり、自己勝手のせいでドリーを傷つけてしまったり、カメのクラッシュから息子との関わり方を学んだりします。そしてニモと合流するも、今度はドリーが網に捕まってしまい、最後の決断を迫られます。
  7. ついに、マーリンは息子のニモには救える力があると信じ、ドリーを網から救います。
  8. それ以来、マーリンはニモが一人で生きていけるよう、息子に構い過ぎるのをやめました。

ファインディング・ニモの教訓は「子どもの成長のために、親は息子離れをしなければならないこと」です。

ストーリースパインを見てわかるように、すべてのステップが主人公のマーリンの「息子離れ」への気付きとなっています。

物語を通して、自身の恐怖や弱さと向き合い、学んでいくことで、主人公の成長の姿を描きます。

ストーリースパイン(Story Spine)のまとめ

あなたは物語を通して何を伝えたいですか?

ストーリースパインは物語の教訓に一貫性を持たせる手法です。

ぜひ、あなたの物語もストーリースパインの8ステップに当てはめてみてください。それでは。

P.S この記事を書くために『トイ・ストーリー3』を見直していたら、また泣いてしまいました。