【2-4】障害/Obstacles/Pixar in a Box

こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。

ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box
Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。

今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座【2-4】障害/Obstaclesの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)

Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、2章は「キャラクター/Character」。

【2-4】障害/Obstaclesは、ストーリーで出会うキャラクターの障害についてお話しします。キャラクターに障害を用意することで、あなたの物語が観客の心に残る旅となりますので、ぜひ後半のレッスンもチャレンジしてください。

それでは、どうぞ!

「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。

キャラクターの障害とは

キャラクターには、欲しいもの(ウォンツ)と人生で必要なもの(ニーズ)を手にするのを阻む「障害」を作ることが大切です。なぜなら、障害はストーリーテリングの基本だからです。

障害とは、キャラクターの前に立ちはだかる壁です。「人」、「距離」、「恐怖」など、どんなものでもあり得ます。キャラクターの人生に苦労を与えて心の葛藤を起こすことが目的です。

障害の例を、3つご紹介します。

1. エリオット:E.T.

人間の手とエイリアンの手の接触

2003年公開、第40回ゴールデングローブ賞「ドラマ部門作品賞」を受賞したE.T.

主人公の『エリオット』の障害は「E.T.がエイリアンである」ことです。

E.T.はエリオットの心の淋しさを埋めてくれる存在です。エリオットはE.T.に「地球にずっといて欲しい」と願うけど、E.T.は地球で生きることができません。

最終的に、エリオットはE.T.との別れを選択しますが、この選択によってエリオットの「心を強く」します。

2. マックィーン:カーズ

世界地図の上に黄色い車

2006年公開、アニー賞「長編作品賞」を受賞したカーズ

主人公の『マックィーン』は、レース中にラジエタースプリングで足止めをくらいます。大事なレースなのに前へ進めない障害です。

しかし、マックィーンは道路を直しながら「ペースを落としてレースを楽しむこと」や「友達を作る大切さ」に気付きます。

このように障害は、キャラクターが「人生で必要なことを学ぶ」役割があるのです。

3. マーリン:ファインディング・ニモ

スキューバダイビングの水中のニモ(カクレクマノミ)の家族

2003年公開、第76回アカデミー賞「長編アニメーション賞」を受賞したファインディング・ニモ

主人公の『マーリン』の障害は「海の恐ろしさ」です。

妻を失ったマーリンは、いつも息子のニモに”サンゴ礁の中にいなさい”と言います。

しかし、マーリンはニモを探すため「サンゴ礁」という安全な環境を捨てなければなりません。マーリンにとって海は「目に見える障害」です。しかし、息子探しの旅でもう一つ「心の障害」に気づきます。

それは、自分自身の「息子離れ」です。

カメのクラッシュとの出会いでは、「息子を信じる親心」を学びます。クラゲの群れによってドリーを傷つけた時は、「他人の意見を聞かない自分の未熟さ」に気づきます。

このように、ストーリーテリングは目の前の障害に立ち向かうことで「心の障害に気づくこと」が大切です。

障害はどうやって考える?

椅子に座り考える女性

ピクサーのスタッフはどのようにキャラクターの障害を考えるのでしょうか?実際にお話を聞いてみましょう。

1. キャラクターがどうやったら「目標達成に必要なこと」に気付くかを考えます。

– アートン・カービン:Storyboard Artist –

2. ピクサーでは、この旅がキャラクターにとって「何になるか」をとにかく考えるよ。

– オースティン・マディソン:Storyboard Artist –

3. キャラクターによっては「恐怖」が障害になります。私たち人間もよく「恐怖」を避けようとしますからね。

– アートン・カービン:Storyboard Artist –

4. ストーリーはカーチェイスや魔法など「ワクワクするシュチュエーション」を考えたくなるよね。

でも大切なのは、キャラクターがカーチェイスや魔法によって、どうやって「心の障害と向き合い」、どうやって「欠点と向き合うか」なんだ。

– オースティン・マディソン:Storyboard Artist –

5. キャラクターがウォンツ(実現したいこと)やニーズ(人生で必要なこと)を考えられる障害を用意してあげてね

– ロニー・デ・カルメン:Story person, director, designer –

ピクサーがキャラクターに障害を作る目的は、キャラクターを成長させるです。キャラクターの成長はストーリーのメッセージを伝えるため、心と向き合う障害を作る必要があります。

【レッスン】障害を考えよう

白い壁紙に今すぐ試すと書かれた文字と青い矢印

Pixar in a Boxのストーリーテリング講座のレッスンです。

今回のレッスンはキャラクターの障害について考えます。「3つの物語」と「あなたのキャラクター」を使いますので、下記ページをご覧ください。

今回は3つのステップです。それでは、どうぞ

1. 好きな物語の主人公

あなたが好きな3つの物語の主人公は、どのような障害に出会いますか?それぞれ、1つずつ書き出してください。

2. あなたの障害

あなたは人生でどのような障害に出会いましたか?また、その障害によって手に入らなかったものは何ですか?

3. あなたのキャラクターの障害

あなたのキャラクターはどのような障害に出会う可能性がありますか?3つ考えてみましょう。

今回のレッスンは以上です。
あなたのキャラクターの障害が書き出せた人は、コメント欄やTwitterに投稿してみてくださいね。

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【2-4】障害/Obstaclesのまとめ

キャラクターの「障害」はいかがでしたか?

ストーリーテリングで大切なのは、キャラクターが「心の障害に気づくこと」です。

決して無理な壁を作ることが目的ではなく、「キャラクターを成長させる」こと大切です。観客は、キャラクターが障害を乗り越えた先の「教訓」に共感します。

ぜひあなたの大切なメッセージを、ストーリーで伝えましょう。

【2-4】障害/Obstaclesは以上です。
【2-5】キャラクターアーク/Character arcへお進みください。

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オレンジ色の背景にストーリーテリングと描かれたカチンコ

【2-4】障害/Obstaclesの動画

【2-4】障害/Obstaclesの日本語翻訳

【登場人物】
ナレーター(Christian Roman:Story Artist)
オースティン(Austin Madison:Storyboard Artist)
ロニー(Ronnie del Carmen:Story person, director, designer, trouble maker)
アートン(Aphton Corbin:Storyboard Artist)
ルイス(Louise Smythe:Storyboard Artist)

ナレーター:キャラクターが物語で行動する上での「動機」について考えてきましたね。今度は視点を変えて、キャラクターの前に”立ちはだかるもの”について考えてみましょう。

「障害」と表現されるものです。

障害は、どんなものでもあり得ます。「人」や「遠い距離」や「恐怖の感情」など。

それが何であれ、障害とはキャラクターの道を塞ぎ、キャラクターが欲しいもの、必要としているものを手にするのを阻みます。

スタッフは障害についてどう考えているのか聞いてみましょう。

– 「障害」とは何ですか? –

オースティン:ストーリーテリングに大事なことは、キャラクターのウォンツとニーズだけではなく、”何がキャラクターの前に立ちはだかるか”、”どんな衝突なのか”なんだ。

ロニー:僕らはキャラクターの「障害」を作るとき「木に押し込んで、そこに岩を投げつける」みたいな例えをするんだ。人生に少し「苦労」を与えるんだ。

アートン:『ファインディング・ニモ』のマーリンにとっての障害は「海」という恐ろしさよね。
ニモにはいつも”サンゴ礁にいなさい、ここは安全だから”と言っていたからね。

でも、ニモを探しに海へ出るなら快適な環境を全て捨てなければならなかった。それ以降、マーリンがニモに辿り着いても息子離れが出来るように、マーリンの障害は「海」ではなく「息子離れ」になるよう仕掛けられているの。

ルイス:『E.T.』では、エリオットという男の子が、E.T.というエイリアンと出会います。
エリオットは”E.T.に地球にずっといて欲しい”と願うけど、この時の障害は「E.T.がエイリアン」であるということ。E.T.は地球では生き残れないの、死んでしまうから。

– どのように「障害」を決めますか? –

アートン:私は、キャラクターがどうしたら目標を達成するため必要なことに気付くかを考えるわ。

オースティン:ピクサーでは、ストーリーやその映画を制作する時、この旅がキャラクターにとって「何になるか」をとにかく繰り返し考えるよ。

アートン:キャラクターによっては「恐怖」が障害の役目を果たすわ。私たちもよく「自分の恐怖」を回避しようと対処するでしょ。

だからもし「恐怖と戦わなければならないキャラクター」を作るなら”戦うのか?逃げるのか?”の速攻劇になって、キャラクターは恐怖に反応しなければならないわ。

オースティン:ストーリーを展開していく時、”ワクワクするシュチュエーションはどんなだろう?”、”カーチェイスは?魔法は?”って考えたくなるよね。

でも大事なのは、そのカーチェイスや魔法が、どうやって「心で障害と向き合い」どうやって「自分の欠点や短所と向き合うか」なんだ。

ロニー:だから、キャラクターがウォンツやニーズを考えられるように「障害」を用意してあげてね。

ナレーター:ちなみに私のお気に入りの映画は『カーズ』です。

マックイーンの本来の目標はカリフォルニアに到着して、ビックレースで勝つことだけど、ラジエタースプリングスで足止めをくらって道路を修繕しなければならない時、マックイーンに必要なことは「ペースを落として旅を楽しむこと」、「友達を作ること」なのです。

次のレッスンでは、キャラクターが直面した障害と、その対処法について考えてもらいます。