こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。
ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box。
Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。
今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座【2-2】内面と外見/Internal vs external featuresの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、2章は「キャラクター/Character」。
【2-2】内面と外見/Internal vs external featuresは、キャラクターの「内面」と「外見」の考え方についてお話しします。あなたのキャラクターに内面と外見を与えることで、よりリアルなキャラクターが作れますので、ぜひ後半のレッスンもチャレンジしてください。
それでは、どうぞ!
※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。
キャラクターの「内面」と「外見」
キャラクターは「内面」と「外見」を考えることが大切です。なぜなら、ざっくりとしたアイデアのキャラクターでは、観客に興味を持ってもらえないから。
「内面」とは、キャラクターの性格です。危なっかしかったり、勇敢だったり、嫉妬深かったり。
「外見」とは、キャラクターの見た目です。デザイン、服装、色合いなどを言います。
ピクサー映画に登場する3つのキャラクターを例にしてみましょう。
1. ウォーリー
2008年に公開され、第81回アカデミー賞「長編アニメーション映画賞」を受賞した『ウォーリー』。
主人公の『ウォーリー』は、ただのゴミ処理ロボットではありません。
物事を考えたり、イブを心配したり、愛したりと、好奇心旺盛で寂しがり屋なロボットです。
2. ニモ
2003年に公開され、2004年のオリコン年間DVD総合チャートで第1位を獲得した『ファインディング・ニモ』。
主人公の息子役の『ニモ』も、ただの魚ではありません。
お父さんの『マーリン』の手から離れたくて反発した行動を取ることで、自分を危険な目にさらしてしまいます。
3. メリダ
2012年公開、第66回英国アカデミー賞「アニメー映画賞」を受賞した『メリダとおそろしの森』。
主人公の『メリダ』も、ただの女の子ではありません。
家族の期待に応えないで、自分の夢や希望を叶えようとする小さなプリンセスです。
ピクサーはキャラクターに「内面的特徴」と「外見的特徴」を与えることで、観客が興味を持つキャラクターへと進化させているのです。
キャラクター作りは何から始める?
ピクサーのスタッフはどのようにキャラクター作りを始めるのでしょうか?実際にお話を聞いてみましょう。
1. 私はキャラクターと友達になります。何をして、何を信じて、何を楽しんで、何を楽しまないか?って考えるわ。
– ルイス・スマイス:Storyboard Artist –
2. 私は「外見」を先に考えます。服装、スタイル、髪型とかね。結果的にそれが「内面」へ繋がります。
– アートン・カービン:Storyboard Artist –
3. 僕の好きなキャラクターは『Mr.インクレディブル』の『シンドローム』なんだ。
「外見」はスーパーヒーローのようにコスチュームを着て、マントをかぶって、髪がキラキラしている。でも「内面」は”そんな道具は全て捨てたい”と思っている。
外見と内面が対照的だからこそ、高級感とリアル感を生み出しているんだ。
– オースティン・マディソン:Storyboard Artist –
ピクサーのスタッフは「内面」を大切にしています。そして、内面と外見にギャップを作ることで、リアルなキャラクターを生み出しています。
内面と外見のアイデアはどこから?
ピクサーのスタッフはどこから「内面」と「外見」のアイデアが思いつくのでしょうか?お話を聞いてみましょう。
1. キャラクターは実在する人物の感情や経験が参考になるよ。
– ロニー・ド・カルメン:Story person, director, designer –
2. キャラクターの参考は君の知り合いとか、生活で見つけたものとかでもいいんだ。
– オースティン・マディソン:Storyboard Artist –
3. キャラクターを考えるときは”これはお母さんがよくしていた行動だ”とか”このキャラクターは高校の同級生にそっくり!”とか”弟の小さい時はこんな感じだったな”とか、記憶の気づきを大切にしているわ。
– ルイス・スマイス:Storyboard Artist –
4. キャラクターに家族や友達を重ねます。家族や友達が持つ「特異性」は楽しいものです。
– アートン・コービン:Storyboard Artist –
ピクサーはキャラクターの内面と外見を考えるとき、家族や友達など「実際に存在する人物」を参考にしています。特に自分と違う考えを持った身近な人物が参考になるようです。
カールじいさんの空飛ぶ家
2009年公開、ゴールデングローブ賞「アニメ映画賞」を受賞した『カールじいさんの空飛ぶ家』。
主人公の『カール』は、脚本のロニー・ド・カルメンの父親がモデルになっています。
映画の製作中、ロニーの父は体調が悪くて入院していました。白髪の父に話しかけても会話は出来なく、笑顔と顔の動きでやっとコミュニケーションが取れるくらい。
ロニーはこの経験を映画の参考にしました。
それは、カールが目的地の「テプイ」に到着するシーン。カールは家で一人、エリーとの生涯を静かに振り返ります。このシーンでカールにセリフはなく、表情だけで感情が理解できるように描かれています。
ロニーは、“父との経験がなければテプイに到着するシーンは描けなかった”と言っています。
【レッスン】内面と外見を考えよう
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座のレッスンです。
今回のレッスンはキャラクターの「内面」と「外見」について考えます。「3つの物語」と「あなたのキャラクター」を使いますので、下記ページをご覧ください。
- 「3つの物語」:【1-3】あなたの好きな物語/Your favorite stories
- 「あなたのキャラクター」:【1-5】世界観とキャラクター/World & Character
今回は3つのステップです。それでは、いきましょう!
1. 好きな物語の主人公
あなたが好きな3つの物語の主人公について、以下の2つを考えましょう。
- 主人公の「内面の特徴」を3つずつ書き出してください。
- 主人公の「外見の特徴」を3つずつ書き出してください。
2. 知り合いの内面と外見
あなたの家族や友人など、知り合いの「内面の特徴」と「外見の特徴」を3つずつ書き出してください。
3. あなたのキャラクターの内面と外見
あなたのキャラクターの内面と外見について、以下の質問を参考に書き出してみましょう。
【内面】
- あなたのキャラクターは何が好きですか?
- あなたのキャラクターは何を恐れますか?
- あなたのキャラクターはどんな感情をよく感じますか?(喜び、悲しみ、怒りなど)
【外見】
- あなたのキャラクターは何ですか?(人、動物、物体など)
- あなたのキャラクターはどんな服装ですか?
- あなたのキャラクターはどのように動きますか?
- あなたのキャラクターを遠くから見たとき、最初に気づく特徴は何ですか?
今回のレッスンは以上です。
あなたのキャラクターの内面と外見が書き出せた人は、コメント欄やTwitterに投稿してみてくださいね。
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#内面と外見
【2-2】内面と外見/Internal vs external featuresのまとめ
キャラクターの「内面」と「外見」を考えると、キャラクターが本当に望むものが見えてきます。そして本当に望むものは、物語においてキャラクターの動機になります。
キャラクターを完成させるのは簡単ではありません。
しかし、キャラクターをよく理解することで、どんな状況にいても、どう行動するかが想像できるのです。
あなたがキャラクターを知れば知るほど、観客が興味をもつリアルなキャラクターに進化します。
【2-2】内面と外見/Internal vs external featuresは以上です。
【2-3】ウォンツとニーズ/Wants vs. needsへお進みください。
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※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
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【2-2】内面と外見/Internal vs external featuresの動画
【2-2】内面と外見/Internal vs external featuresの日本語翻訳
【登場人物】
ナレーター(Christian Roman:Story Artist)
オースティン(Austin Madison:Storyboard Artist)
アートン(Aphton Corbin:Storyboard Artist)
ルイス(Louise Smythe:Storyboard Artist)
ロニー(Ronnie del Carmen:Story person, director, designer, trouble maker)
ナレーター:私の名前はクリスチャン・ロマン。ピクサーのストーリーアーティストです。
第2レッスン「キャラクターの進化」は、私が担当します。それでは、仲間を紹介します。
オースティン:僕はオースティン・マディソン。ストーリーアーティストをしているよ。
アートン:アートン・コービンです。絵コンテを担当しています。
ルイス:ルイス・スマイスよ。絵コンテを担当しているわ。
ロニー:ロニー・ド・カルメンです。僕は脚本家であり、監督であり、デザイナーでもあり、ピクサーのトラブルメーカーでもあるよ。
ナレーター:このレッスンの目的は、私たちのキャラクター作りを知ってもらうことです。「ロボット」、「魚」や「女の子」などシンプルなキャラクター構想から、実際に観客が興味を持ってくれる、複雑なキャラクターへと進化していきます。
「ウォーリー」を例に見てみましょう。彼はただのロボットではありません。怖がったり、考えたり、愛したり、孤独で好奇心旺盛なキャラクターです。
「ニモ」も、ただの魚ではありませんね。父親から独立したいと切に願うけど、それを実行しようとして、自分を危険な目にさらします。
「メリダ」は家族の期待に従いません。自分の夢や希望を叶えようとする、小さなプリンセスです。私たちは、キャラクターを「進化」させています。
つまり、キャラクターについてよく知っているので、どんな状況にいても、どう行動するかが想像できるのです。
完成したキャラクターを目指すのは簡単なことではないけど、ゼロから命を吹き込み完成させると、絶対に特別な気分になりますよ。それでは、ピクサーはどのようにキャラクター作りを始めているのでしょうか?
−あなたは何から始めますか?−
オースティン:キャラクターは、2つの側面から考えることが出来るんだ。
1つめは「外見的特徴」。デザインとか、服とか、見た目だね。
それからもっと面白いのが、2つ目の「内面的特徴」。危なっかしいのか、勇敢なのか、嫉妬深いのかとか。
ルイス:私はそのキャラクターと会話して、友達になったつもりになります。彼なら何をするのか?何を信じて、何を楽しみ、何を楽しまないか?って考えるわ。
アートン:私の場合は「外見」を先に考えます。何を着ているとか、スタイル、髪型とかね。それが「内面」へと繋がります。
オースティン:僕の好きなキャラクターは『シンドローム』なんだ。外見はスーパーヒーローみたいだろ?
ヒーローのコスチュームを着て、マントをかぶって、髪がキラキラして。でも内面は完全な悪で”そんな道具は全て捨てたい”と思っている。
「外見」と「内面」が対照的だよね。そこが高級感とリアル感を生み出しているんだ。
−「外見」と「内面」のアイデアは、どこから思いつきますか?−
ロニー:キャラクターは「実在する人物」の感情や経験を参考にするのがいいと思う。
オースティン:自分自身だけを参考にしなくてもいいんだよ。君が知っている人とか、実生活で見つけたものとかでもいいんだ。
ルイス:心の声を逃さないようにしているわ。”これはよくお母さんがしていたことだ”とか”この子は高校の同級生にそっくり!”とか”弟が小さい時はこんな感じだったな”とかね。
アートン:キャラクターに家族や友達を重ねると、とても考えやすくなります。
家族や友達が教えてくれる私が思い付かないような「特異性」は楽しいものです。特異性をキャラクターに落とし込むとワクワクします。
ロニー:僕は『カールじいさんの空飛ぶ家』のストーリーアドバイザーを担当していたんだ。この映画には少し身を捧げたよ。
というのも、当時僕の父の体調が良くなくて、しかも白髪だっただ。
カールがテプイに着くと、家で一人エリーとの生涯を振り返るシーンがある。カールはただただ静かに振り返るんだ。
僕はこのシーンの絵コンテを担当しているとき、ちょうど父も入院していて会話も出来なかった。父に話しかけても、笑顔と顔の動きでやっとコミュニケーションが取れるくらいでね。
この経験は、カールがエリーとの生涯を静かに振り返るシーンで確実に役立ったよ。映画では、カールにセリフがなくても、観客に感情を理解できるようにしたよ。父との経験がなかったら、僕はこのシーンの絵コンテは描けなかったよ。
ちゃんと言ったよ、”カールのモデルは父さんだ”って。
ナレーター:キャラクターの「外見」と「内面」を知ると、キャラクターが本当に望むもの。つまり、物語の旅路で「キャラクターを動かすもの」を理解するのに役立ちます。
最初のレッスンでは、キャラクターの「外見」と「内面」の違いについて考えます。
あなたがキャラクターについて知れば知るほど、キャラクターは生き生きとしてきますよ。