【6-2】ピッチ/Pitching/Pixar in a Box

こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。

ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box
Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。

今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座【6-2】ピッチ/Pitchingの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)

Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、6章は「ピッチと感想/Pitching and feedback」。

【6-2】ピッチ/Pitchingは、「ピッチ」の語り方について詳しく解説します。

後半にはレッスンもありますのでチャンレンジしてください!

「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。

ピッチとは

ピッチとは、絵コンテや画像を使って相手にストーリーを伝える方法です。

ピクサーのストーリーアーティストは、ストーリーの絵コンテが完成すると大勢の仲間の前で「ピッチ」を行い、仲間から率直な感想を受け取ります。

自分のストーリーは正しく伝わっているのか?どのような感情が湧いたのか?

仲間の感想をもらい、自分からは見えないストーリーの側面を理解することで、ストーリーにさらなる磨きをかけます。

素晴らしいストーリーを作るために「ピッチ」は必要不可欠なのです。

ピッチで大切な4つ

ストーリーのピッチで大切なのは、あなたのストーリーを相手に的確に伝えることです。

そこで、ピッチで大切な4つのポイントを紹介します。

体と声

ピッチで大切な1つめのポイントは「体と声」を効果的に使うことです。

ストーリーには緊張が走るシーンや物事がどんどん展開するシーンなど、様々なシーンがあります。

ストーリーの出来事に興味を惹くために「活気ある声」、「顔の表情」、「動作」で感情の変化を表現することが大切です。

「体と声」の効果的な使い方は「アンドリュー・スタントン(『ファインディング・ニモ』の監督)」のピッチがとても参考になるので、ページ下部の動画をご覧ください。

言葉の表現

ピッチで大切な2つめのポイントは「豊かな言葉」で表現することです。

ピッチは、絵コンテを詳しく説明しなくても、ストーリーの意味は相手に伝わります。

例えば、「男性が部屋に入ってきます」というより、「黒い影がゆっくりと部屋に入ってきます」の方がシーンの緊張感や雰囲気が伝わります。

このように、絵コンテに描かれていない状況を「豊かな言葉」で表現して、相手の想像力を働かせることが大切なのです。

ピッチのペース

ピッチで大切な3つめのポイントは「ピッチのペース」を意識することです。

テンポのあるシーンでは速めたり、静かなシーンでは「間」を取って遅めたり。

シーンに合った「ピッチのスピード」を心がけることで、状況が的確に伝わります。

練習

ピッチで大切な4つめのポイントは「練習」です。

練習はピッチだけに限らず、ストーリーテリングのすべてにおいて大切な行動です。

鏡に向かって練習したり、近しい仲間に話してみたり。

何度も何度も声に出して練習して慣れていくことで、自分の考えに集中できるようになります。

ピッチのアドバイス

白い背景に笑顔の若い女性

ピクサーのスタッフがピッチについてアドバイスしていますので、ご紹介します。

1. ピッチの1番のアドバイスは、ワクワクドキドキした気持ちを全力で伝えることよ。

恥ずかしがらずに自分のストーリーに入り込めば、相手に意欲が伝わりしっかり聞いてくれるわ。

– ドミ・シー:Story Artist –

2. ピッチをする時は、映画を観ているように自然に話すんだ。「説明」になってはいけないよ。

ストーリーを「演じる」ことで、観客が話に集中してくれるんだ。

– ボブ・ピーターソン:Writer –

3. ピッチの観客は「敵」ではないの。言葉につまずいたとしても大丈夫よ。

みんなは、あなたがどんな考えやストーリーを話してくれるのか楽しみにしているわ。

– ドミ・シー:Story Artist –

【レッスン】ピッチの練習をしよう

白い壁紙に今すぐ試すと書かれた文字と青い矢印

Pixar in a Boxのストーリーテリング講座のレッスンです。

今回は「ピッチ」の練習です。「絵コンテ」を使いますので、下記ページをご覧ください。

それでは、どうぞ!

ピッチの練習

あなたの物語の「絵コンテ」を撮影し、ピッチの練習をしましょう。

始めは鏡の前。次に家族や仲間に。そして、感想を答えてくれる相手へ。

以下の5つを意識しながら練習しましょう。

  1. キャラクターたちの特徴は、それぞれどのように表現できますか?
  2. シーンの肝となる「セリフ」を考えましょう。強調することで、より伝わりやすくなります。
  3. 相手の想像力が働く「豊かな言葉」を考えましょう。
  4. 「体と声」の使い方を考えましょう。体の動き、声のトーン、効果音などを意識してください。
  5. 「ペース」に注意しましょう。テンポのあるシーン、静かなシーンのペースに強弱をつけてください。

今回のレッスンは以上です。
ピッチができた人は、コメント欄やTwitterに投稿してみてくださいね。

<#タグはこちら>
#ピクサーレッスン
#ピッチ

【6-2】ピッチ/Pitchingのまとめ

素晴らしいピッチには練習が欠かせません。

あなたのストーリーに磨きをかけるために、繰り返しピッチの練習をしましょう。

ピッチを聞く相手は、あなたの味方です。

【6-2】ピッチ/Pitchingは以上です。
【6-3】感想の伝え方/Giving feedbackへお進みください。

次の講座

こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box。Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、[…]

オフィスで感想をもらう若者

「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。

講座一覧

こんにちは!ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。ピクサーは世界が認めるストーリーテリングの伝道師。ピクサーの全21作品(1995年〜2019年)は、アニメ映画賞の最高峰と言われるアカデミー賞「長編[…]

オレンジ色の背景にストーリーテリングと描かれたカチンコ

【6-2】ピッチ/Pitchingの動画

【6-2】ピッチ/Pitchingの日本語翻訳

【登場人物】
ナレーター(Madeline Sharafian:Story Artist)
ボブ(Bob Peterson:Writer)
アクセル(Axel Geddes:Editor)
アナ(Anna Wolitzky:Editor)
ドミシー(Domi Shi:Story Artist)
アンドリュー(Andrew Stanton:Director『ファインディング・ニモ』『ウォーリー』)
バレリー(Valerie LaPointe:Story Artist)

ナレーター:
前回の動画に出演していた、マデリン・シャラフィアンです。

最後のレッスン「ピッチ」、「ピッチの感想」、「編集」について紹介する、ピクサーのストーリーアーティストです。

私の仲間のアーティストと編集者を紹介しましょう。

ボブ:
やあ。ピクサーの作家のボブ・ピーターソンです。

アクセル:
映画編集者のアクセル・ゲディスだよ。

アナ:
編集者のアナ・ウォリツキーです。

ドミシー:
ドミよ。最初のレッスンに出ていたのを覚えているかな。

ナレーター:
前回の動画では、ピッチからストーリーの手ごたえをつかむことがわかりました。

素晴らしいストーリーの完成に不可欠なピッチに慣れるには、たくさんの練習が必要です。

ピッチの達人アンドリュー・スタントンの、『ファインディング・ニモ』の初期のピッチを観てみましょう。

アンドリュー:
そこで6歳の息子のニモに起こされます。ニモのヒレはバラクーダとの事故でケガを負い、上手く泳げません。でも学校の初日の今日は元気に泳ぎ回っています。ニモにとって待ちに待ったこの日を、ニモのお父さんはずっと恐れていました。そしてお父さんの不信感と海への恐怖がついに現実となります。変わり者の理科のレイ先生が生徒たちを野外教室の珊瑚礁に連れ出すからです。お父さんが心配してニモを学校へ送って行く途中、興奮したニモはたくさんの質問をします。

“お父さん、サメがいるかも。サメを知ってる?”

“いやいや、サメに会うつもりはないな”

“ウミガメは350歳まで生きるって、サンディ・プランクトンが言ってた”

“大袈裟だと思うけど、ウミガメに聞いてみるよ”。

学校に着くと、生徒たちがレイ先生の背中に乗り珊瑚礁に消えて行くのを、お父さんはハラハラしながら見送ります。心配するお父さんに、ある保護者が言います。

“大丈夫。ほとんどが生きて帰って来るから。初めて水中にひとりで落とされる時は怖いけどね”

お父さんは、

“ひとりで落とされる?危険すぎる。ニモは泳げないんだ!”

とうろたえて珊瑚礁に向かいます。

ナレーター:
アンドリューは、出来事をひとつずつ順番に説明していましたね。活気ある声と動作で、興味をそそる感情的な雰囲気を伝えていました。

ストーリーを伝えるための声とからだの効果的な使い方に注意して、アンドリューのピッチを見直してみるといいですね。

ピクサーで最も多くピッチをするのは、私のようなストーリーアーティストです。映画監督や他のストーリーアーティストへピッチを繰り返し、より良いストーリーにします。

バレリー・ラポイントの、『インサイド・ヘッド』のピッチを観てみましょう。

バレリー:
どうして今までここに来たことがなかったの?パパとママの仕業に違いないわ。(うなる)

ナレーター:
バレリーは何人かのキャラクターを演じるため、キャラクターごとに声を使い分けていました。

こうした工夫により、観客はキャラクターの気持ちを含めたストーリーの要点を理解できます。

ピッチをする時、描いた絵を詳しく説明しなくても相手に意味は伝わります。表現豊かな言葉を使えば、絵コンテに描かれていないことも聞いている人が想像できます。

例えば、“男が入って来ます”の代わりに、“黒い影が、ゆっくりと部屋に入って来ます”という風に。

表現豊かな言葉の他に、話の速さや遅さである「ペース」にも気をつけます。

動きのある箇所は速めに進め、静かな箇所では「間(ま)」をとりながらゆっくりと話し、強調したい絵にはさらに時間をかけます。

ピッチへの取り組み方は、人それぞれです。ピクサーのアーティストにヒントを聞いてみましょう。

– ピッチについてアドバイスはありますか? –

ドミシー:
ピッチの1番のアドバイスは、観客にストーリーをワクワクドキドキした気持ちで全力で伝えることよ。

恥ずかしがらずに自分がストーリーに入り込めば、ヤル気が観客に伝わり相手もしっかり聞いてくれるわ。

ボブ:
ピッチをする時は、映画を観ているようにストーリーを自然に話すんだ。「説明」になってはいけない。

過去にこんなピッチを聞いたよ。

“この男が道を歩いていますが、この道を使うかどうか決めていなく、本当はここに影がなくて、かけているはずの眼鏡はかけないことにします。この絵には他の鉛筆を使えば良かったですね。つまりこの男が…”。

これでは話が伝わらない。代わりに、

ある日、サリーが道を歩いていたらマイクがやって来て、

“サリー、一体何をしてるんだ?”
“マイク、だまれ”

という風に、話を自然に進ませる。

棒読みでなくストーリーを演じることで、観客が話に集中し反応してくれるんだ。

ドミシー:
アドバイスの二つ目は、「練習」よ。

鏡や自分の親しい仲間に向かい、ストーリーを声に出して何度も練習するの。慣れてくると言葉につまずかなくなる。そうすれば相手に自分の考えを集中して伝えられるわ。

ボブ:
僕は必ず声に出して練習するよ。机に向かい、ストーリーを想像しながら演じるんだ。

時には鏡の前でも練習して、5回、6回、7回とくり返すうちにピッチに重要なリズムがつかめる。平坦に話すのでなく、スピードを上げたり下げたりして声に表情をつけるんだ。

声の表情で、嬉しさから悲しみ、または悲しみから眠気などの感情の変化を伝えるには、練習するしかないよ。

ドミシー:
安心してピッチをする方法はいくつかあるけど、自分の中に気持ちをため込まず、発散させるのもいいわ。そうすればピッチの時に、ため込んでいた言葉を焦って口走ることがないの。

私はなぜかピッチの前に、トイレの鏡に向かってやる気を出すの。そして呼吸を整える。

ピッチの観客は「敵」ではないの。言葉につまずいたとしても大丈夫なことを忘れないで。みんなはどんな考えやストーリーを話してくれるのか楽しみにしているの。みんなが応援しているから、決して心配し過ぎないこと。

ピッチで同じ話をくり返したり、言葉につまっても大丈夫。それが原因で嫌われたりしないわ。「私は大丈夫」と言い聞かせ、深呼吸して、頭をすっきりさせてから始めるのよ。

ナレーター:
素晴らしいピッチには、練習が欠かせません。次のレッスンで早速取り組んでみましょう。