こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。
ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box。Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。
今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座【6-4】感想の受け入れ方/Digesting feedbackの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、6章は「ピッチと感想/Pitching and feedback」。
【6-4】感想の受け入れ方/Digesting feedbackは、「感想の受け入れ方」について解説します。チームで素晴らしいストーリーを完成させるために、感想をもらう目的を再確認しましょう。
後半にはレッスンもありますのでチャンレンジしてください!
※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。
ピッチの感想の受け入れ方
ピッチが終わって仲間から否定的な感想をもらうと辛い気持ちになります。
そのためピッチの感想を受け入れるには、改めてピッチの目的を理解することが大切です。
結論、それはストーリーを良くすることです。
感想は批判ではありません。より素晴らしいストーリーを作るためのアドバイスなのです。
ピッチの目的を理解した上で、以下の2つを意識してみましょう。
1. 感想は全員のため
1つめのポイントは、シーンを良くすることは、映画を作る全員の目的であると理解することです。
映画は1人で完成しません。監督、脚本家、プロデューサー、編集者など、多くの人々が関わって一つの作品が生まれます。
否定的な感想は「あなた」を否定しているわけではなく、素晴らしい映画を作る全員のためだと受け入れることが大切です。
2. 誰もが失敗をする
2つめのポイントは、誰もが失敗をすると理解することです。
最初から素晴らしいストーリーを完成させるのは困難です。
一生懸命作ったシーンでも、他人から観たら“全然面白くない”、”シーンが長すぎる”と言われることもあります。
しかし、そうやって失敗を積み重ねることで、あなたは客観的な視点を身に付けることができます。
失敗は成長への架け橋だと、受け入れることが大切です。
ピッチが終わった後
ピッチが終わった後は、まずはリラックスをしましょう。
あなたはピッチを成功させるためにたくさんの練習をして、シーンを磨いてきたはずです。そのまま修正作業に入ると、あなたずっと集中し続けることになります。
仲間の前で発表を終えたら、まずは自分を褒めて、体をリフレッシュさせてください。ストーリーの修正はそれからです。
リフレッシュをした後
リフレッシュが終わって気分転換ができたら、ストーリーの改善へと頭を切り替えましょう。
まずは、絵コンテを見直してこんな質問をしてみてください。
- “どうすれば、もっと伝わりやすくなるだろうか?”
- “どうすれば、もっと面白くなるだろうか?”
このときに大切なのは、深く考えず、とにかく書き出すことです。
頭に思い浮かんだアイデアをリストにして、ストーリーを良くする方法を探しましょう。
リスト化した後
ストーリーを良くする方法をリストにしたら、簡単な修正作業から始めましょう。
「画面のキャラクターを大きくする」、「絵コンテの順番を変える」など、比較的に手のつけやすい作業から始めることで、修正できた自分に自信が付きます。
自信がつくことで、難しい問題に取り組むことができるため、簡単な作業から取り組むことが大切です。
難しい問題への対処
難しい問題への対処をする際に大切なのは、ストーリーで伝えたいことから逸れないことです。
ピッチの感想によっては、難しい問題に対処しなければなりません。
そのようなとき、一つ一つの感想に応じてしまうと、ストーリーの目的から逸れてしまう場合があります。
大切なのは、感想への対処ではなく、「問題の原因」を突き止めることです。
例えば、「キャラクターの大切な気持ちが欠けている」といった難しい感想(問題)を受け取ったとします。そのようなとき、「大切な気持ち」の表現方法はたくさんあります。
しかし、ストーリーテラーである「あなたにしかできない表現」を導き出せれば、それほど素晴らしい解決はありません。
ストーリーの「1番の理解者」である、あなたにしかできない解決方法を考えてみましょう。
例:Mr.インクレディブルの難しい問題
2004年公開、第77回アカデミー賞「長編アニメ映画賞」を受賞した『Mr.インクレディブル』。
監督のブラッド・バードは主人公のボブと妻のヘレンが口論するシーンのピッチをしたとき、多くの感想を受け取りました。
- ボブがヘレンを支配している。
- ヘレンの言い分を押さえつけている。
- ボブがヘレンに攻撃的すぎる。
ピッチの感想の中には、“ショットの位置を変えた方がいい”という具体的な案もありました。
しかし、ブラッドは感想の原因である「ボブとヘレンの対等性」に気づき、ヘレンが能力でぐんぐんと大きくなりボブの背丈を越すことで、視覚的にボブとヘレンの関係は「対等である」という表現をしました。
シーンの変更はこれだけだったのにも関わらず、仲間からは大絶賛で、ブラッドは難しい問題を見事に対処しました。
感想の原因に取り組み、難しい問題を解決したとても良い例です。
【レッスン】感想を受け取る
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座のレッスンです。
今回は「感想の受け入れ方」をグループで行います。
それでは、どうぞ!
感想から修正する
感想を受け取ったら、以下4つの手順でシーンの修正しましょう。
- 感想からできる修正をリスト化して、「最も簡単な修正」から始めましょう。難しい問題に当たるまで修正を続けます。
- 難しい感想の「原因」を突き止めましょう。どのような改善方法が思いつきますか?
- いくつかの改善案を出し、その中から最も最適だと思う解決策を選びましょう。
- 修正が終わったら、同じ仲間に発表してください。チーム全体が納得のいくシーンが出来上がるまで、何度も修正を行いましょう。
今回のレッスンは以上です。
感想の受け入れが終わった人は、コメント欄やTwitterに投稿してみてくださいね。
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#ピクサーレッスン
#感想の受け入れ
【6-4】感想の受け入れ方/Digesting feedbackのまとめ
ピッチの感想で大切なのは、ストーリーに焦点を当てることです。
感想は自分に対してではなく、ストーリーを良くするための意見として受け入れましょう。
そして、チーム全員で素晴らしいストーリーを完成させるのです。
【6-4】感想の受け入れ方/Digesting feedbackは以上です。
【6-5】ストーリーリール/Storyreelsへお進みください。
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【6-4】感想の受け入れ方/Digesting feedbackの動画
【6-4】感想の受け入れ方/Digesting feedbackの日本語翻訳
【登場人物】
ナレーター(Madeline Sharafian:Story Artist)
アナ(Anna Wolitzky:Editor)
ボブ(Bob Peterson:Writer)
アクセル(Axel Geddes:Editor)
ドミシー(Domi Shi:Story Artist)
ナレーター:
前回の動画では、ストーリーテラーへのピッチの感想の伝え方を学びました。
今回は反対に、ピッチの感想を受け取るストーリーテラーの視点から考えてみましょう。
ピクサーでは、受け取ったピッチの感想を「ノート」と言います。全力で打ち込んだピッチに否定的なノートを受け取ると、辛い気持ちにもなります。
そのようなとき、ピクサーのアーティストはどうするのでしょうか。
– どのように批判を受け入れますか? –
アナ:
シークエンスの編集中に、信頼できる人に意見を聞くの。他の人の感想はいつも参考になるし、何を言われても気にならないわ。
感想を伝えてくれるのはシーンをより良くするためで、協力して映画作りをしているみんなの目的だからよ。
ボブ:
“これじゃダメ”、“長すぎる”、“面白くない”という感想をもらったことがある。その中でも「面白くない」と言われると、本当に落ち込んだものさ。
面白くしようと一生懸命作ったストーリーを、誰も笑わないんだ。笑うどころか、みんな僕を責めるように見つめ、完全に黙り込み、まったく反応がなかった。これほど辛いことはないよ。
でも誰もが一度は必ず失敗するから、仕方ないさ。
アクセル:
最初は、批判されているのは自分だと勘違いしていたよ。
でも本当はみんな、映画のために感想を伝えていたんだ。ノートを基に映画をより良くすることは、自分を含めた全員のためだと気づかなかったんだよ。
自分の考えを何が何でも通そうとするのは意味がない。修正が必要だと言われたら、それは映画のためなんだ。
ナレーター:
ピッチの感想の目的は、ストーリーをより良くすることです。
感想は相手に対する批判でなく、より優れた映画作りのためであることを見失わないことが大切です。
ピクサーでは、この大切なことをスローガンにしています。
「相手じゃない。作品なんだ。」
ノートを受け取ったら一度立ち止まり、自分に合った方法で感想を分析します。
– ピッチの後はどうしますか? –
ボブ:
大勢の前で緊張しながら全力でピッチを披露した後は、まず自分を落ち着かせよう。とにかくリラックスすることが1番さ。僕はバスケットボールをして、気分転換していたよ。
ドミシー:
しばらくピッチのことを考えないようにするわ。ピッチの後すぐに修正作業に取りかかると、またずっと何かに集中することになる。
まずは頭をスッキリさせないと疲れてしまうわ。私の場合はどんな絵でも、2、3時間続けて向き合うと嫌になってくるの。
だから作業をひと休みして、頭を切り替えるわ。
ボブ:
気分転換ができたら、ピッチをした絵コンテを見直し自分に問いかける。
“どうすれば、もっとわかりやすくなるだろう”
“もっと面白くする方法は何だろう”
という風に。僕にとっての良い修正方法は、リストを作ることなんだ。
”もっと面白いのは何だろう”という問いに、頭に浮かんだいくつものアイデアをリストにする。
深く考えず、とにかく書き出してみて、ストーリーをより良くする方法を探すんだ。
ナレーター:
ピッチのノートには、取り組みやすいものと、取り組みづらいものがあります。
私は、キャラクターを画面で大きくしたり、絵の順番を変えたりする、手をつけやすいものから始めます。
そうして修正していくと自信がつくため、もっと難しい問題に取り組む勇気が湧いてきます。
修正の仕方を考える場合、ストーリーで伝えたいことから逸れないように注意しましょう。
ひとつひとつのノートに応じるのではなく、「ノートが伝えている問題の原因」が何かを見極めます。
難しい「ノート」はどのように取り組みますか? –
ボブ:
問題を解決するにはいくつもの方法がある。でも解決するには、「ノートの原因」を突きとめなければならない。
例えば、「はっきり伝わらない」とか「キャラクター同士の大切な気持ちが欠けている」というノートを受け取ったとする。「大切な気持ち」の表現の仕方はたくさんあるね。
そのたくさんの方法から、ストーリーアーティストである自分でしかできない方法で解決できると素晴らしいね。
ドミシー:
例えば、『Mr.インクレディブル』のボブとヘレンが家族について口論をしているショットに、監督のブラッドはたくさんのノートを受け取ったの。
ボブはヘレンを支配して、ヘレンの言い分を押さえつけようとしているように受け取られたの。観客はその見せ方が間違っていると思ったのよ。
ボブがヘレンに対して攻撃的すぎるという感想がなくならなかった。解決策として、ショットの設定場所を変えるという提案もあったわ。
でもブラッドは自分の意図に反して、ボブとヘレンが対等に見えないという「ノートの原因」に取り組んだの。
視覚的に「二人の対等さ」を表現する必要があったのよ。
映画の完成では、ボブに“あなたじゃない”と言い返すヘレンの背丈がぐんぐん伸びてボブを追い越す。変更したのはそれだけだったのに、みんなから大絶賛の感想をもらったの。
ブラッドは感想でもらった提案どおりの変更はしなかったわ。代わりに、「ノートの原因」を探し当て、取り組むことで問題を解決したのよ。
ナレーター:
ストーリーと「絵」を修正したら、またピッチです。満足するまで、ピッチと修正を何度も繰り返します。
ピッチの達人、アンドリュー・スタントンの言葉です。
「失敗は早目に何度もしよう、ピッチの数だけストーリーが進歩するから。」