【5-7】映像技法のアドバイス/Advice/Pixar in a Box

こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。

ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box
Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。

今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座第【5-7】映像技法のアドバイス/Adviceの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)

Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、5章は「映像技法/Film grammar」。

【5-7】映像技法のアドバイス/Adviceは、5章の最後の講座です。

ピクサースタッフが未来のストーリーテラーへ向けて「絵コンテの描き方」や「映像技法」のアドバイスを送っていますので、最後までお楽しみください。

それでは、どうぞ!

「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。

映像技法で大切な5つ

映像技法で大切な5つのポイントをまとめたのでご紹介します。

1. シーンの1番大切な瞬間を描く

1つ目のポイントは、ストーリーのシーンにおける「1番大切な瞬間」を1枚だけ描くことです。

ストーリーは様々なシーンが繋がって1つの作品になります。

しかし、1つのシーンに時間をかけすぎると、ストーリー全体の進み具合が悪くなってしまいます。

そのため、それぞれのシーンで1番大切な瞬間を1枚だけ描くことで、ストーリー全体の完成が早まります。

全体が完成したら、仲間に見せてみましょう。

ストーリーの感想を聞くことで、1枚の絵が「どのようなストーリーを伝えるのか」を客観的な意見として取り入れましょう。

2. シーンを編集してみる

2つ目のポイントは、実際に映画のシーンを編集してショットの分析をしてみることです。

映像データを手に入れるのは難しいと思います。

そのため、DVDで借りた映画のワンシーンをスマホで撮影して、ショットの意図を分析したり、ショットを並べ替えたりしてみましょう。

※注意※
撮影した動画をインターネットにアップロードしたり、SNSに投稿したり、他人に見せたりするのは違法行為です!!取り扱いに注意してください!!

3. メイキング映像を観る

3つ目のポイントは、DVD/ブルーレイ映像の特典でつく「メイキング映像」を見ることです。

メイキング映像は作り手の考えがわかる、優れた学習教材です。

  • どのような選択をしたのか?
  • 何を表現したかったのか?
  • どこが難しかったか?

映像技法の知識を得るだけでなく、仕事の姿勢やチーム作りなどのエッセンスを監督やスタッフから学んでみましょう。

4. チームでストーリーを作る

4つ目のポイントは、チームでストーリーを作ってみることです。

ピクサーでも1つの作品はチームで作られています。お互いが助け合うことで、自分の技術や専門知識が磨かれます。

仲間と協力してストーリーを作ることで、チームが生み出すエンパワーを体感しましょう。

5. 映画作りに参加してみる

5つ目のポイントは、実際に映画撮影をしている現場に参加してみることです。

ストーリー作りを上達するためには、失敗とチャレンジが欠かせません。実際に映像現場に飛び込み、壁にぶつかってみることで、成長への機会にしましょう。

素晴らしいストーリーが完成した時は、この上ない喜びを感じることができます。

【5-7】映像技法のアドバイス/Adviceのまとめ

ピクサースタッフのアドバイスはいかがでした?

もしあなたが、絵コンテや映像技法で行き詰まった時は、ぜひまた覗いてみてください。

あなたのストーリーが、人々の心に深い満足を与える作品になりますように。

【5-7】映像技法のアドバイス/Adviceは以上です。また、5章「「映像技法/Film grammar」の講座もこれで終了です。

お疲れ様でした:)

次回は6章「ピッチと修正/Pitching and feedback」について学習します。

ピクサーが映画技法における基本的な要素を解説します。画面で表現できる情報の原則を知り、あなたのストーリーをより的確に伝えるテクニックを学んでください。

【6-1】ピッチと修正とは?/Introduction to pitching and feedbackでお待ちしています。それでは。

次の講座

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オレンジ色の背景にストーリーテリングと描かれたカチンコ

【5-7】映像技法のアドバイス/Adviceの動画

【5-7】映像技法のアドバイス/Adviceの日本語翻訳

【登場人物】
アンドリュー(Andrew Jimenez:Digital Storyboard Artist,Director)
キャサリン(Katherine Ringgold:Editor)
リー(Lee Unkrich:Director)
ブライアン(Brian Kalin O’Connell:Story Artist)

– ストーリーテラーへのアドバイスはありますか? –

アンドリュー:
シーンの「1番大切な瞬間」をストーリーの重要点として1枚の絵にする。次のシーンに進み、同じように1枚描く。

この方法の長所は、次のシーンに早く進め、1つのシーンに時間をかけないことだ。

シーンの「大切な意味」を伝える1枚の絵が描けたら、ピッチのことや他人に理解してもらえるかは心配しなくていい。自分が気に入った絵で表現できたら、他は気にせず次のシーンに進もう。

同じ作業を5シーン分くらい繰り返したら、すべての絵を見直す。

満足したら友達に見せて感想を聞いてみよう。すべての絵から友達がどんなストーリーだと思うか感想を聞き、1枚の絵が何を伝えるかを学ぶんだ。

キャサリン:
映画を観て学ぶ時、最初はただ楽しんで観ることを勧めるわ。

もう一度観直す時に、それぞれのシーンをショットで区切り、ショットの意味を分析するの。可能なら映画のデータを実際に区切ってみて、ショットを並べ替えるとどうなるか試すといいわ。

そしてまた元に戻し、作り手が”なぜその順番でショットをつなげたのか?”を考えるの。

リー:
僕がまだ映画学校の学生でDVDがなかった頃は、映画監督の「メイキングの話」を大きなレーザーディスクで聞いていたんだ。嬉しいことに、その後もずっとDVDやブルーレイに監督の話が取り入れられている。

メイキングは映画の作り手の考え方がわかる素晴らしいアイデアで、作り手が経験した「映画作りの難しさ」、「どんな選択をしたのか」、「何を表現したかったのか」、「どこで失敗しかけたか」がわかるんだ。

多くの監督は、撮影上の不安や、理想的なショットが撮影できなかった後悔についても話している。

映像技法や、映画のセットの人々の力関係、撮影隊との協力などすべてが重要な学びの素材だ。映像技法や映画制作の知識を得るだけでなく、撮影隊との最適な仕事の仕方や、共同作業をしている人たちの長所の引き出し方まで学べる。

ブライアン:
初めてピクサーに来たとき、ストーリーテラーにとって最高の場所だと感じたよ。

でも僕は、今もまだピクサーにふさわしくないと思っているよ(笑)。なぜなら、僕ひとりではピクサーの高いレベルに到達できないからさ。

実はピクサーの全員がそう感じているんだ。

お互いが助け合うことで、初めてストーリーが伝えられることは、最初に誰も教えてくれない。常に、自分の技術を高め、自分の専門知識を磨き続ける必要があり、ピクサーではみんなで協力してストーリーを伝えているんだ。

リー:
僕のピクサーでの映画作りが25年近くになっても、新しい映画を作る度に、1作目と同じ難しさを感じる。

ピクサーが生まれたアメリカでは2000年以上もストーリーテリングの文化があるけれど、ストーリーテリングが簡単になることはない。

勉強会に参加したり、映画の脚本やストーリー構成を誰かに教えてもらったりしても、教えている人のほとんどが映画の制作にかかわっていないんだ。

だから時には実際の映画作りに飛びこんで、上手くできるようになるまでたくさんの失敗や間違いを経験することも必要だ。

壁にぶつかり苦しむこともあるけれど、上手くいった時はこの上ない喜びを感じるよ。

キャサリン:
女の子のストーリーテラーたち、絶対にあきらめないで。映画には女の子の力がもっと必要よ。