こんにちは、ストーリーライターのそーじろ(@sojiro_story)です。
ピクサーのストーリーテリングが学べるPixar in a Box。
Khan Academy(カーンアカデミー)が世界の人に世界レベルの教育を無償で提供する、オンライン講座の一つです。
今回は、Pixar in a Boxのストーリーテリング講座【1-1】ストーリーテリングとは?/Introduction to storytellingの解説です。(TOEIC950点かつピクサーファンの翻訳家が協力)
Pixar in a Boxのストーリーテリング講座は1〜6章あり、1章は「私たちはみんなストーリーテラー/We are all storytellers」。
【1-1】ストーリーテリングとは?/Introduction to storytellingは、ピート・ドクター(モンスターズ・インクの監督)がストーリーテリングにおいて大切なことをお話ししていますので、ぜひストーリー作りの参考にしてください。
では、さっそく見ていきましょう!
※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
※日本語の翻訳全文はページ下部に載せています。
ストーリーテリングとは?
ストーリーテリングとは、あなたが伝えたい思いを「ストーリー(物語)」で語り、聞き手に共感を持たせる手法です。
ピクサー映画が世界中で愛されるのは、ピクサーのスタッフ全員が「優れたストーリーテリング」を理解しているからです。共感するストーリーの作り方、素晴らしいストーリーテラーの育成が脈々と受け継がれ、今のピクサーがあります。
ストーリーテリングと「優れたストーリーテリング」には違いがあります。
Pixar in a Boxは「優れたストーリーテリング」を伝えるための講座です。ピクサーのスタッフ(監督やストーリーアーティスト)がどのようにストーリーを作り始めたのか?ピクサーのスタッフがどのようなストーリーに影響を受けたか?などについて聞き、どのようなストーリーを伝えるべきかを学びます。
ストーリーテリングはホモサピエンスの虚構
私たち人間は「会話」という技術を身につける前からストーリーが語られていました。
月明かりに火を灯しながら、昼間にマンモスを狩ったストーリーを語り、知恵を分け与える。
ライオンを守護霊と崇め、架空のストーリーを語り、部族を協調させる。
ストーリーは人と人を感情で結び、共感を生むため、協力した行動ができるのです。
私たち人類の祖先であるホモ・サピエンスが世界の大陸を支配できたのでは「虚構」のおかげだと言われています。伝説、神話、神々、宗教など架空の物語を想像して語るのはホモ・サピエンスだけが身につけた能力です。
ホモ・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人と大きく異なるのはストーリー(虚構)を語ることです。
ホモ・サピエンスはストーリーを使い意思疎通を行なうことで、大規模な集団で文明を発達させ、食物連鎖のトップに立つことができたのです。
ストーリーテリングはあなたの経験
ストーリーテリングで大切なのは、あなたの経験です。なぜなら、相手に共感してもらうため。
2001年にアメリカで公開され、アカデミー賞4部門にノミネートした『モンスターズ・インク』。ピート・ドクター監督の製作当初のテーマは「モンスターが人間界の子どもを怖がらせる話」でした。”これは絶対に面白いぞ”と思ったピート監督はすぐにピクサーのストーリーチームにプレゼンします。
- モンスターが仕事の話をする
- 好きなドーナツの話をする
- 会社に対するグチをこぼす
しかし、チームのみんなの反応はいまいちでした。
ピート監督は思いました。
“なぜ、みんなは興味を持ってもらえないのだろう?”
考えに考え抜き、思い切ってテーマを「父親になる一人の男の話」に変更しました。
これはピート監督自身の体験だからです。
生まれて初めて自分の娘を抱っこした体験。
娘を育てた苦労や経験を「サリー」というキャラクターに当てはめました。
『モンスターズ・インク』のストーリーにピート監督自身の体験や感情を取り入れたことで、世界中で愛される名作となったのです。
【1-1】ストーリーテリングとは?/Introduction to storytellingのまとめ
ストーリーテリングで大切なのは、あなたが経験した「感情」を取り入れることです。
宇宙の話でも、カーチェイスの話でも、おもちゃの話でも、そこにあなたが体験した感情なければ共感は生まれません。
もちろんストーリー作りは一筋縄ではいきません。
ピクサーはもちろん、ディズニーやジブリでも何度も何度もストーリーを練り直して、1つの作品が完成します。そうやってひたむきに向き合い続けることで、ある日突然「ひらめき」に出会えるのです。
今日からあなたもストーリーテラーです。
ぜひ、あなただけのストーリーを一緒に作りましょう。
【1-1】ストーリーテリングとは?/Introduction to storytellingは以上です。
【1-2】あなただけの世界/Your unique perspectiveへお進みください。
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※「ピクサーのストーリーテリング41ステップ」で講座の一覧が見れます。
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【1-1】ストーリーテリングとは?/Introduction to storytellingの動画
【1-1】ストーリーテリングとは?/Introduction to storytellingの日本語翻訳
【登場人物】
バレリー(Valerie LaPointe:Story Artist)
ピート(Pete Docter:Director『インサイド・ヘッド』『カールじいさんの空飛ぶ家』『モンスターズ・インク』)
バレリー:はい、ピート
ピート:あぁ。やぁバル
バレリー:調子はどう?
ピート:最近、あんまり良くないんだ
バレリー:どうしたの?
ピート:(以下、ピートが視聴者に向けて話す)
今バルが「どうしたの?」って聞いたけど、これは「あなたの話をして」ってことだよね。そしてこれは「Pixar in a box」の全てを物語っているんだ。
ピクサー映画を作るには何年もかかるけど、全ては「ストーリー」から始まる。
人間は「会話」という技術を身につけるもっと前から「ストーリー」を使っている。火を囲みながら話をし、絵を描き、小説を書いたり、短編映画を作ったり、写真を撮ったり、ツイッターを使ったり。「ストーリー」は、人々を感情という深い部分まで結びつけることが出来るんだ。
つまり、このビデオを見ている君たちに向けたアドバイスは「あなたが知っていることを書きなさい」ということだよ。
でもね、僕は子どもの頃(田舎のミネソタ)のことは退屈だから書きたくないんだ。「爆発」とか「モンスター」とか「カーチェイス」を書きたい。
何が言いたいかって、「モンスター」でも「カーチェイス」でも「爆発」でも書いていいんだけど、自分自身の人生の話や、自分が感じたことも入れてみてってこと。
それは、怖いのか。寂しいのか。
君自身が感じたことは、「ストーリー」を生き生きとさせるし、単なる退屈なカーチェイスでもなくなる。
僕が『モンスターズインク』を監督した時、最初のテーマは「モンスターが職業として人間界の子どもを怖がらせること」だった。モンスターたちは朝から夜まで仕事をして、ドーナツを食べて、会社の話をして。
当初はこういうのが楽しくてみんな笑ってくれるだろうと思っていた。
でも、このストーリーを周りに伝えてもみんな退屈そうだったんだ。”私には理解できない”、”なんの映画?”ってね。
考えて考えて、ついに分かったのは「子どもを怖がらせるモンスターの映画」ではなくて、「父親になる1人の男の映画」にするってことだ。これは僕自身も、父親として、身をもって体験したことだからね。
でも、なぜ自分が感じたことをストーリーにするのか。
それは、自分自身に起きたことは、自分がどこか特別な風に感じるから。
君が「ストーリー」を語るとき、大切にすべきことは「聞き手も同じような気持ちになってもらうこと」なんだ。
僕がストーリーを勉強する中で一番意外だったのは、脚本の努力量だよ。
だって、ウォルト・ディズニーとか宮崎駿って、頭の中に”ひらめき”が降りてきたら、もうストーリーは完成も同然だと思っていたから。
でも実際には僕らの仕事は一筋縄にはいかなくて、2回、3回、4回、、、30回と、何回も何回も練り直していく。
そうすることで、ついに「ひらめく」瞬間が来るんだ。
「Pixar in a box」では、君たちの活躍に一役買えればという願いを込めて、話をするよ。
(以下、冒頭の会話に戻る)
バレリー:で、本当にどうしたのピート?
ピート:あ、そうそう。じゃあまず僕の書斎に向かおう。もう朝の8時だ。